ヘッドホンコラム

【意味ない?】エージングの効果や方法について、肯定派否定派を深堀り

皆さんはエージングという言葉を知っていますでしょうか?

エージングとは新品の音響機器(スピーカーやヘッドホン)にある程度の時間音楽を流しドライバを馴染ませる作業のことで、本来の音を引き出す、音を馴染ませるとことを目的に行われます。

エージングはaging→年齢を重ねるという意味から来る単語で、新品状態からの慣らし運転をするような意味合いです。アンチエイジングのエイジングと同じ語源です。

エージングはヘッドホンに限らずスピーカー等のオーディオ機器全般に使われる言葉ですが、昔からエージングの効果はある派と無い派(エージングはオカルト派)が議論されています

この議論はヘッドホンアンプは効果あるのか問題と同様に終わりのない議論が続いていますが、筆者は基本的にはエージング否定派のため、当サイトのレビューにはエージングという単語は出てきません。(エージングすると角が取れる等の表現は無いです)

というのも後述の「耳エージング」や、体調や気分による音の聞こえ方の違いの方が影響が大きい(というより世の中のエージングはこれらの影響)と考えるからです。

とは言え一般的なエージングの効果やエージングの方法について本記事で説明し、
エージングについて各社の見解や、ネット上の意見などを紹介し、なぜ筆者がエージングについて否定的なのか説明していきます。

エージングの効果

一般的にエージングは下記効果があると言われています。

  • ドライバーが振動に馴染み、本来の音が出る
  • 特定の音が大きい個体のバランスが改善(個体ばらつきが改善)
  • (特に高音域)の角が取れる

上記効果は頑なに効果はあると断言するエージング信者的な人も居る一方、ただのオカルトとばっさり否定する人がいます。

ただし、感覚的にはありそうと思わせる内容が並んでいますが、科学的な根拠ははっきりと明言されておらず説得力に欠ける感が否めません。

ちなみにオーディオメーカ各社としても必要派と不要派で立場が分かれており、音作りを生業とするメーカでも意見が一致しないとなるとどちらかが間違っていると断言できない状況です。(各メーカの見解は下記で後述します)

ただ何れにしてもエージングとは、本来の実力を引き出すために行われる行為で、そもそもの音が劇的に変わるわけでは無いという認識には間違いありません。

本来の実力を発揮するという点ではヘッドホンアンプと似たような効果ですが、こちらは根拠があります。

(関連記事)
ヘッドホンアンプの効果については下記記事で詳しく説明しています。当サイトの人気記事です。興味があればこちらもどうぞ!
【本当に必要?】ヘッドホンアンプの効果について

エージングの方法

エージングの方法は色々な方法があり、これをやればOK!というのは無くいくつか方法があります。シンプルに音楽を流すものから、ピンクノイズ、ホワイトノイズを流す方法などがありますので、順番に説明します。

普段聞くジャンルの曲でエージング

まずよく言われるのが、自分が良く聞くジャンルの曲を流し続けるという方法で、その音楽に適した音がでるようになると言われています。

どことなくオカルト感が漂いますが、例えば低音が多いジャンルなら低音成分が多い曲を流し続けることで、ヘッドホン側が低音側に馴染んでくるという理屈です。

ホワイトノイズによるエージング

またホワイトノイズを流す方法があります。ホワイトノイズとは、様々な音の周波数が一定の強度になっているノイズで、簡単にいうと全ての音(可聴域)の成分が等しく含まれているノイズです。

つまりはホワイトノイズで、低~高音まですべての周波数の信号を万遍無く鳴らすという意図があります。

音としてはラジオノイズのような「サー」という音です。エージングにも使える長時間流せるyoutubeの動画を紹介します。

再生数は驚異の1.5億再生(!)です。皆が皆エージングを行っているわけではなく、ホワイトノイズにはリラックス効果や集中力を高める効果があると言われているのでそちらがメインです)

ピンクノイズによるエージング

ピンクノイズもエージングに用いられます。ピンクノイズとはすべての周波数成分が一様なホワイトノイズとは異なり、周波数に反比例して音が小さくなるノイズで、高い周波数の音ほど弱くなるノイズです。

このためホワイトノイズと比較すると低音側の音が大きくなり、音としては滝の音に近い感じです。エージングにピンクノイズを使用する理由は高音域が大きいと音割れする可能性があるため、エージング中の音割れを防ぐ意図があるようです。

なお周波数に反比例する音は1/fゆらぎ音とも言われ、リラクゼーション効果があると言われています。こちらの動画もエージング用というよりリラクゼーション用で再生数を集めています。

エージングの注意点

エージングを行う際には注意点もあります。

  • 音は大きければ良いというものではない
  • ある程度の時間は必要(ただし時間ははっきりと決まっていない)

上記のようにエージングは大きな音の方がより効果がような気がしてしまい、大音量で流したくなりますが、大音量を長時間はドライバーを痛める可能性があるのでNGです。あくまで適度な音量が大事です。

またエージングは数時間×一回流した程度では完了しないと言われています。エージングに必要な時間も所説あり一般的には決まっていませんが、一日数時間を一か月程度というのが良く言われています。

あるいはひたすら長時間流しっぱなしにする等のやりかたもありますが、何れにしても一日二日程度では完了しないので注意です。

エージングの効果について各社の見解

エージングの効果について、オーディオメーカによってはエージングに対する見解をFAQなどで回答しています。調査したところ各メーカの回答をまとめている記事がありました。非常に参考になる内容でしたのでリンクで紹介します。

(引用元:気になるマンぶろぐ様)
https://kininaruman.me/burn-in-or-break-in-headphones

要約すると、

オーディオテクニカ:購入直後のヘッドホンはそれぞれの部品が新しく、慣らし運転をすることでドライバーがこなれていく→肯定派

ゼンハイザー:初めて使用する瞬間から素晴らしい音を奏でるよう設計されている→否定派
ただ日本向けの公式ブログでは購入当時の音質と三年使った製品の音質はまるで違うと思います。という記載もあるようです。

final:概ね150-200時間程度通常の使い方をすると繊細さが増し、本来の設計意図の音質になる→肯定派
(ただし通常使用のエージングでOKで、意図的にエージングする必要はない)

Shure:エイジングは不要。特にイヤホン等の小型ドライバは通常の信号では1/1000インチほどしか動かないので影響なし→否定派

意外にも各社で意見が割れておりどちらとも言えない結果ですが、ただわざわざエージング用に音楽を意図して流し続ける必要はないといったところは感じます。

エージングについてネットの見解

ネット上の賛成派、否定派共通見解として、あくまで慣らし運転なので見違えるような劇的な変化は無いというところは概ね一致していますが、効果ある派、無い派のそれぞれ意見をまとめてみました。

効果がある派

  • 尖っていた高音域が柔らかく聞こえるようになった
  • はじめは今一つだったが視聴を重ねるうちにエージングが進み良くなった
  • 機械的エージングは存在する。ドライバーユニットとボイスコイル接着部の接着剤が経時変化や振動で状態が変化し、音が変化することはある(final社)
  • ヘッドホンはイヤーパッドの経時変化で密閉度が変化する(final社)

効果がある派の意見は上記です。エージングの効果で説明した、高音域の刺さりがなくなったことを実感したという意見があります。

またヘッドホンのレビューや口コミ等でよく見られるのが、エージングが進んだらイマイチと思った点が解消されたという意見をよく見かけます。エージングという概念は結構一般的なので口コミ等でも結構効果を信じている人が多いことがわかります。

個人的に一番興味深かったのが、国産高級イヤホンで知られるfinal社の見解で、機械的エージングの話です。

ドライバー部の接着剤の経年による馴染みや接着状態の変化が音の変化をもたらすという話はエージングで音が変わる要因をちゃんとした根拠に基づいて説明しており、エージング懐疑派の自分としても、なるほどと思わされました。

final社の機械的エージングの記事の詳細は下記です。(長いですが勉強になります)

(参考記事:final社音響講座(ASCII.jp))
ヘッドホンのfinalが音響講座を開講、エージングの効果は本当にある? 数値化できない音の印象をどう伝える?

効果が無い派

  • プラシーボ効果で良くなった気がしているだけ
  • 耳が音に慣れたために角が取れた様に感じている(耳エージング)
  • 音の変化は経年劣化とも言えるため、エージングが進む=音が良くなるとは限らない

一方効果が無い派の意見は、プラシーボ効果により音が良くなった気がしているだけという意見が多いです。

また「耳エージング」という言葉がありますが、はじめは耳が音に慣れておらず、特定の音域(特に高音)が刺さると感じていたのに、しばらく使っていると耳が慣れて気にならなくなる現象です。(筆者も耳エージングは体感しており同意です。)

またエージングによって音が変わるということは、ある意味それは経年劣化であり角が取れる=刺激が無くなる側面もある。エージングが進む=一概に音質が良くなるわけでは無いという意見もありました。

機械的エージングで音が変化はするということがあっても、それが良い方向に変化するとは限らない(音が自分の好みの方向に変化するとは限らない)という点は納得です。

またオーディオケーブル専門店のコラムにエージングは全くのデタラメ!と一刀両断する記事がありました。面白い記事だったので下記に乗せておきます。

(参考記事:オーディオケーブル専門店PRO CABLE殿の記事)
– エージングというデタラメ!・その異常性!を大公開!(オーディオ問題)-

なお上記サイトではエージングとともにオカルト扱いされがちなケーブルについては効果はありとのこと。本サイトにまだ記事はありませんがケーブルの効果についての記事も後日作成予定です。

筆者の見解:耳エージングの影響大。また体調次第でも音は変わる

最後に筆者の見解ですが、基本的には否定派です。
というのもエージングで音が変わったと感じる理由は大きく分けて「1.耳エージング」と、意外に思われるかもしれませんが、「2.体調やメンタルの影響」も音の聞こえ方に大きく関わることを実感しています。下記にて説明します。

〇耳エージングについて
色々なヘッドホンをレビューしている都合上、耳エージングの効果を身をもって体感します。

いくつもヘッドホンを聞き比べているため、あるヘッドホンをしばらく使った後はそのヘッドホンの音に耳が慣れます。

他のヘッドホンを使った後、元のヘッドホンに戻った時にあれ、こんな音だっけ?と違和感を感じることはかなり有ります。
(はじめは違和感を感じながらも、少し使うとこんな音だったな、と再確認するケースも多い)

この経験から巷でいわれているエージングは殆ど耳エージングだろうと感じてしまいます。

〇体調やメンタルの影響について
また、筆者の体験として、耳も人間の体の一部であり、結局は脳が情報を処理するため、その時の体調や精神状態によって聞こえ方が実はかなり変わります。

例えば気分が落ち込んでいるときなどは、お気に入りのヘッドホンをつけてもどこか今一つに感じることがあります。

逆に気分が乗っているとき(社畜的には仕事を終えた週末の夜など)は活き活きとした、開放的で明らかに良い音に聞こえるのです。
(だまされたと思って一度試してみてみてください)

なお根拠としては微妙ですが、Yahoo知恵袋に気分によって音が変わることはある?という質問に対して、めっちゃ変わるという回答がありましたので参考にリンクを載せておきます。
(参考:Yahoo知恵袋)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10259289695

上記経験から、巷で言われるエージングは殆どこのどちらかの影響と考えます。

ただ今回の調査の中で見つけたエージング肯定派の意見の、ドライバーの接着部分の馴染み(経年)の影響で音が変わる、機械的エージングという内容は初めて知ったので、良い学びになりました。(オーディオは奥が深い!)

皆さんの意見はどうでしょうか?エージングをすることで本来の音を出している納得感を得る意味で全否定はしませんが、基本的には本サイトのレビューにエージングという単語は使用しません

ただ耳エージングであっても、はじめ違和感を感じた製品を使い続けるうちに印象が変わってくるケースも事実としてありますので、イマイチかな?と思ってもしばらく使い続けて耳を慣らすというのはありだと思います!