今回はaudio technica ATH-AD900Xをレビューします。本機はオーディオテクニカの開放型ヘッドホンで、2万円程度の価格帯のミドルクラスの製品です。
オーディオテクニカの開放型のシリーズは側面がほぼフルメッシュ構造で、特筆すべき音の抜けの良さと広い音場感が特徴の製品です。
どちらかというと弟分のATH-AD500Xの方が1万円クラスで売れ筋のイメージですが、本機はAD500Xの良い所をそのままに、AD900X用の専用ドライバーを採用しさらにレベルアップした製品です。
本記事では2万円程度の価格帯のベストセラーのK701やHD598とも比較しています。2万円台の定番ヘッドホンHD598やK701と遜色ない製品(むしろクラシックならこちらがおすすめ)なので、選択肢として一考の価値ありです。
audio technica ATH-AD900X 製品スペック 外観レビュー
メーカ | Audio technica |
---|---|
タイプ | ダイナミック開放型 |
重量 | 275g(コード含まず) |
インピーダンス | 38Ω |
コード長 | 3.0mストレートコード(着脱不可) |
参考価格 | 18000円 |
タイプは開放型のヘッドホンで、側面がフルメッシュなのでかなり開放感が強い=音の抜けが良好ですが、反面遮音性は低く、音漏れが大きいヘッドホンです。
このため屋外使用には向かず、屋内用ヘッドホンになります。
ハウジングは大型φ53ドライバー搭載で大柄ですが、その恩恵で耳を包み込むゆったりとした装着感になっています。
外観は下位機種のATH-AD500Xとほとんど同じ(audio-technicaのロゴが銀から金色になっている!)で、本当に価格分の違いがあるの?
と気になりましたが、公式サイトによるとドライバーはAD900用に新設計しているとのことで、中身は確実に違うことがわかります。(重量もAD500Xの235g→265gに増えています)
なおAD700Xという製品も以前ありましたが、こちらは生産終了しています。(AD500XとAD900Xの間の微妙な差別化ができず立ち位置が微妙だった?)
audio technica ATH-A1000X 5段階音質レビュー
audio technica ATH-A1000X 5段階音質レビュー
音質 :
装着感:
遮音性:
音の傾向:フラット(中~高音寄り)
得意な音楽:ポップス、クラシック
音場感(音の広がり、定位感):◎(かなり良好)
音質は中~高音寄りのフラットな音で、中々のバランスの良さを感じさせます。
オーディオテクニカ=高音寄りで低音が控えめという先入観で聞いてみると、あれ?結構低音も出ている?と感じられ、中~高音の美しさと低域を両立している印象です。
解像度はこの価格としては可もなく不可もなくといったところで、モニター用として使える密閉型の同社ART MONITERシリーズと比べるとやや輪郭はぼやける印象。
ただART MONITERシリーズは解像度と引き換えに高音のエッジがたちすぎて聞き疲れする傾向があるのに対し、本機はリスニング用ヘッドホンらしい聞きやすさです。
なお音場感はかなり良好で、2万円クラスのヘッドホンの中でも秀逸で、はっきりと音楽の定位感を感じることができます。
イメージとしてはボーカルはそこまで近くは無い位置にいて、ギターやベースの音としっかりと分離されて聞こえてきます。
向いている音楽はポップス全般と、音場感の広さと中~高音の美しさからクラシックの鑑賞に堪える製品です。
ロック等もまずまず鳴らせますが、全体的な重心の高さからロックはあまりマッチしません。
EDM等の打ち込み系の音楽も解像度の高さからそこそこ聞けますが、全体的な迫力不足は否めず、テンションを高める音楽よりは、ゆったりとポップス、クラシック等を楽しむといった使い方が良いです。
audio technica ATH-AD900X 装着感について
装着感はウイングサポートと呼ばれる通常のヘッドバンドと異なる頭部をサポートする機構により、優しく頭を包み込むような感覚で、装着感はかなり良好です。
側圧も優しい強さで、長時間使用を想定した設計になっています。
イヤーパッドの中の空間も十分確保されており、耳が当たらないのも◎です。
ヘッドホン本体の重量があるため多少ずり落ちる感がありますが、数あるヘッドホンの中でも屈指の装着感で、メガネをかけていても長時間装着できます。
audio technica ATH-AD900x ad500xの違い
ATH-AD500Xとの違いは見た目はほぼ同じですが、側面のAudio-technicaロゴがなんと銀色から金色に…!もちろん違いはそれだけではなく、
- ドライバーがAD900X専用設計
- 専用ドライバーの効果で音場感が向上しさらに良好な定位感を実現
- 解像度の向上、中~高音域の艶やかさがさらに改善
- 一方で低域はやや控えめに
上記のような違いがあります。AD500も1万円という価格帯でかなり高い完成度を誇る製品ですが、本機はその高い完成度をそのままに、専用設計されたドライバーで解像度、音場感をさらに改善しています。
オーテクらしい中~高音域の艶やかさが増している一方、低域は気持ち控えめになった印象。ただAD500Xの多少低域がぼわつく所が解消され、輪郭がよりシャープになっています。
オーテクは特に高級機種になるほど中~高音域の伸びが顕著になる傾向ですが、本機も中~高音域の改善が目覚ましいです。
ゼンハイザーHD598, AKG K701との比較
同じ価格帯で比較対象になりそうな定番機種のゼンハイザーHD598(599)とAKG K701と比較をしてみました。
〇K701との比較
K701とは中~高音の艶やかさと広い音場感という点で似ていそうだなと思っていましたが、やはり傾向は似ており何度か聞き比べました。
違いをあげるなら、解像度はAD900Xの方が高めで、高音にキレがあり耳にシャリ付く一方、K701のほうが高音の刺さりが無く聞きやすいイメージです。モニター寄りなのがAD900Xで、リスニング寄りなのがK701という感じです。
総合的な評価としては、タイプは若干異なるものの、音質、音場感ともにK701に匹敵するレベルで、十分比較対象になるヘッドホンです。(正直レビュー前はK701には多少見劣りすると思っていました)
装着感の面ではウイングサポートが快適で、何ならAD900Xの方が個人的にはしっくりきており、クリアで解像度が高い音が好みならAD900Xも十分選択肢に入ります。
〇HD598(599)との比較
こちらは違いが明白で、HD598は明らかにAD900Xより重心が低く、暖かみのある響きです。クリアさはAD900Xの方が勝りますが、低音の量感がHD598の方が豊かです。
音の傾向としてはHD598はフラットで、AD900Xもフラット寄りですがやや中~高音寄りです。
解像度はどちらも優秀で同レベルですが、モニターっぽい傾向のAD900Xの方がエッジが聞いており輪郭がはっきりしています。
装着感の面では着け心地はちがうもののどちらも良好で、好みの話になると思いますが、HD598は比較的頭にぴったりとフィットするのに対して、AD900はウイングサポートで優しく包み込む軽い付け心地という違いがあります。
また音場感はHD598はAD900Xと比べると狭く、クラシック等を聴くには定位感に優れたAD900Xの方が得意です。まとめると
AD900X:中~高音寄りで音場感が広い。クリアな響き
HD598:フラットでバランスの良い音質で、低音の量感に優れる。温かい響き
という感じです。AD900Xはロック等は得意ではないため、万能さではHD598ですが、ロックはあまり聞かずポップスやジャズ、クラシックを聴くならAD900Xもおすすめです。
audio technica ATH-AD900X 良い点、悪い点
●良い点
- 開放感に優れ、音場感の広さはこの価格で随一
- キレキレの中~高音で、クリアな音質。ポップスからクラシックまで聞ける
- ウイングサポートの快適な装着感
●悪い点
- 繊細な音作りでロック等には不向き
- 低音はやや控えめ
総評としては音場感の広さはこの価格帯でも随一で、中~高音の艶やかさからポップスのみではなくクラシックに最適なヘッドホンです。
ロック等を聴くならゼンハイザーHD598の方が万能型ですが、本機はクリアな高音が好きな方に一押しです。低音はやや控えめと言っても極端に不足しているわけでは無くバランスは良好なので色々なジャンルの音楽を聴ける製品です。
弟分のATH-AD500Xと比べるとやや影が薄い本機ですが、2万円台の定番ヘッドホンHD598やK701と遜色ない(むしろクラシックならこちらがおすすめ)ので、選択肢として十分入ってくる製品です。
(関連記事:ATH-AD500Xレビュー)
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