今回はHIFIMANのHE-R9をレビューします。
定価は8万円程度のヘッドホンですが、近年海外でかなり安価で売られており、値崩れが発生しているとのことで入手してみました。(amazonで半額程度で入手可能)
HIFIMANというと開放型のイメージが強いですが、本機は密閉型で、振動版の表面に特殊なメッキ処理を施した「トポロジーダイヤフラム」を採用とのこと。
さらに異形のイヤーカップという見た目が筆者的に刺さり興味本位で購入してみました。
結論としては、この価格帯のヘッドホンとしては今どき珍しいかなりの曲者に仕上がっています。同社のHE-400はかなり素直で上品な音ですが、本機はかなり独特な音を出すキワモノです。
低音にボワ付きがあり籠っているような感じが強い反面、密閉型としてはかなり広い音場感でホールにいるような臨場感を感じられる製品でかなりジャンルと人を選ぶヘッドホンです。
万人受けする製品ではないので、複数ヘッドホンを持っていて、あえての味変で尖った製品を求めている人向けの製品と感じました。
HIFIMAN HE-9R 製品スペック 外観レビュー
メーカ | HIFIMAN ハイファイマン |
---|---|
タイプ | ダイナミック密閉型 |
重量 | 328g |
インピーダンス | 60Ω |
コード長 | 3.0m両出しストレートコード |
参考価格 | 39800円(amazon49%オフ) |
タイプは密閉型のヘッドホンです。HIFIMANなので平面駆動かと思いきや本機は平面駆動ではないようです。
外観は目を引く赤紫のハウジングと、異形のイヤーカップが特徴です。筆者はこの外観に惹かれて購入しました。この独特な感じがなんとも良いですね。
イヤーカップは単純なドーム型ではなく、かなり尖った形状です。(下写真の角度だと顕著)この形状の恩恵と思われますが、密閉型としてかなり広い音場感(音響感)がある製品です。
重量は328gとやや重めですが、製品サイズ的にはそれくらいにはなりそうで見た目通りの重さといったところです。
コードは着脱可能なストレートコードで、リケーブル可能です。
なおHIFIMAN DIVAと同様に、別売りのbluetoothアダプターを装着すれば無線化も可能です。(HE-R9 BTという製品でアダプター付きの製品も販売されています)
・トポロジーダイヤフラムとは
本機はトポロジーダイヤフラムというHIFIMAN独自の技術を搭載しています。ダイヤフラム(振動版)に特殊なメッキ処理を施す技術で、HIFIMAN社のイヤホン等にも採用されている技術です。
トポロジーの名前の通り、幾何学模様コーティングの形状や厚さを制御することで、周波数応答の完璧なコントロールを可能にしているとのこと。
振動版上の表面処理によって音色をチューニングするという思想からは無限の可能性を感じられ、個人的にはロマンを感じる技術です。
HIFIMAN HE-9R 5段階音質レビュー
HIFIMAN HE-9R 5段階音質レビュー
音質 :
装着感:
遮音性:
音の傾向:ドンシャリ
得意な音楽:Jazz系?
音場感(音の広がり、定位感):良好
本機を聴いてみてまず感じたのはかなりの曲者…と感じました。
まず気になるのは全体的に低音が籠ったような感覚が強いです。特に安価な密閉型ヘッドホンでたまにある独特の籠ったような感覚が本機にもあり、この価格帯のヘッドホンでこの籠り感は異質です。
また高音域も低音に負けじとそこそこ主張があるので、全体的にはドンシャリな音作りで、フラットからは大きく外れています。それゆえ中音域はやや引っ込んだような特性となっています。
癖はありますが、良く聴いてみると籠るだけの安いヘッドホンとは異なり、高音域は中々の艶やかさは感じられます。ただ全体としてぼわっと広がる低域のため見通しは悪くなっています。
高級機に分類されるヘッドホンなので、さすがに一音一音の解像度は安物とはレベルが違うものの、癖が強いため音質評価は3.5としました。
音場感は独特な形状のハウジングの恩恵なのか、密閉型としてはかなり広いです。開放型の定位感の広さとは異なり、耳の中に小さなホールが出来ているような感覚で、音響感は突出しています。
かなり癖はありますが、ホールでコンサートを聞くような音響感を味わいたい人には刺さる音作りになっています。
全体的な音作りとしては低音が強めなウォームな印象を受けますが、高音のキレがありそこそこ刺激もある点で独特です。ドンシャリ感があり多少の聞き疲れを感じる音です。
かなり癖強機種なので、どんな音楽も聴ける万能機ではありませんが、しいて言うならボワっと響く音の空気感がJAZZ等の雰囲気にマッチすると思います。
またホールで聞いているような印象があり、クラシックも結構悪くない感じでした。ただ繊細さに欠けるので個々の楽器を分析的に聞くのは苦手で、コンサートのライブ音源を聞いているような臨場感を求める人向けです。
またこの臨場感は映画用ヘッドホンとしてかなり良いと思いました。響く低音がかなり迫力あるため、映画感で見ているような感覚を味わえます。
装着感が良いのでゲーム用も悪くないです。(やや聞き疲れはありますが)
始め聞いたときは癖が強すぎると思いましたが、しばらく聞いてみると稀有な臨場感という個性があり、独特の魅力を感じさせる機種ではあります。
万人にはおすすめできませんが、万能機に慣れきっているヘッドホンオタの味変機としての新鮮さは感じられる機種でした。
HIFIMAN HE-9R 装着感について
装着感は本体に重量があるためややずしりと頭に乗る印象はありますが、イヤーパッドに十分なサイズ感があり、包み込まれるような装着感はかなり良好です。
頭頂部のクッションの厚みも十分です。
側圧もそこまで強くないため、眼鏡をかけていても特に問題なく長時間付けていられる点で、映画やゲーム用途もOKです。
HIFIMAN HE-9R 良い点、悪い点
●良い点
- 密閉型の割にはかなり広い音場感。ホールで音楽を聴いているような臨場感
- 独特なサウンドが良くも悪くも個性的
- 特異形状の外観が光る。装着感も良好
●悪い点
- 万人受けはしない音作り。低音がボワつき、籠る感が強い
- 聞く音楽ジャンルを選ぶ音
結論としてはトポロジーダイヤフラムや特異形状のハウジングと色々とチャレンジングな製品ですが、かなり癖の強い機種になってしまった印象です。
密閉型としては異例と言える広い音場感で独特の臨場感はありますが、低音のボワつきと籠る感覚があり、個性的といえば個性的ですが万人受けしない製品になっています。
これ一本でなんでも聞けるというヘッドホンでは無いため、万能機を求める方にはおすすめしませんが、JAZZ等の特定のジャンルが好きな方や、映画やゲーム用途に向いています。
なお同社の平面駆動型ヘッドホンのHE-400seは開放型ですが、かなり癖の少ない素直な音を出すので、こちらの方が万人受けしやすい(価格も求めやすいです)製品です。
興味があれば下記記事もどうぞ。
(関連記事 HE-400seレビュー記事)
【レビュー】HIFIMAN HE400se 曲者と思いきや実はかなり上品だった