今回はaudio technica ATH-A1000Xをレビューします。本機はオーディオテクニカの密閉型ヘッドホンART MONITERシリーズのヘッドホンです。
現行機はA1000Zが発売しており旧世代機ではありますが、中~高音の伸びやかさが際立つ中々尖った性能を持つヘッドホンとのことで、オーテク密閉型ヘッドホンの実力を試すべくレビューしてみました。
結論は上品なサウンドに定評があるオーテクですが、オーテクの製品の中でも特に中~高音域に振っており、稀有なほど気品ある上品サウンドが仕上がっています。
ジャズ、クラシックは素晴らしいの一言でこれ以上ないくらいマッチしますが、ロックですら小奇麗に再生してしまう意味でロックに不向きなヘッドホンになっています。(数多くのヘッドホンを所有してきた筆者的にもここまでロックに向かないヘッドホンはなかなか記憶に無いレベル)
これ一本でどんな音楽も聴きたい人には勧められませんが、オーテクの得意とする上品サウンドの神髄を味わえる面白い製品で、ジャズ、クラシック特化ヘッドホンを探している人におすすめです。
audio technica ATH-A1000X 製品スペック 外観レビュー
メーカ | Audio technica |
---|---|
タイプ | ダイナミック密閉型 |
重量 | 275g(コード含まず) |
インピーダンス | 42Ω |
コード長 | 3.0mストレートコード(着脱不可) |
参考価格 | 約49800円(※当時参考価格) |
タイプは密閉型のヘッドホンです。密閉型の割には遮音性そこまであるわけでは無く、結構周囲の音を拾う傾向です。(逆に閉塞感は少ない)
本機は53mmの大型ドライバー採用ですが、軽量アルミハウジング採用と細いヘッドバンドに軽量化への意思を感じる製品で、全体のサイズ感の割にかなり軽量です。
ヘッドバンドに至っては二本の板のみというシンプル構成ですが、実際に頭をのせるのはウイングサポート部なのでヘッドバンドはこれで良し!という割り切りを感じさせます。(ただ取り扱いは若干気を遣う感はあります、、)
形状は伝統的なオーテクの密閉型ヘッドホンですが、全体的に金属を使っているため高級感があり、下位機種の900X等とはワンランク違う感じを受けます。(さすが定価63800円)
インピーダンスは42Ωとハイエンド寄りの製品にしては低く、比較的鳴らしやすいです。アンプがあればベストですが必須ではなく鳴らせる製品です。
audio technica ATH-A1000X 5段階音質レビュー
audio technica ATH-A1000X 5段階音質レビュー
音質 :
装着感:
遮音性:
音の傾向:中~高音
得意な音楽:ジャズ、クラシック
音場感(音の広がり、定位感):良い
音質の第一印象はとにかく繊細かつ上品な音という印象です。中~高音の伸びやかさは素晴らしく、クラシックやジャズの楽器の音を生生しく再生してくれます。ウォーム系ヘッドホンの対極にある線の細い明瞭な音作りです。
音質もとにかく見通しが良くクリアで、繊細な高音をしっかりと捉えてくれます。密閉型のヘッドホンは開放型に比べて耳の中の音響感がある一方、見通しの良さやクリアさは開放型が優れるイメージでしたが、本品は密閉型ヘッドホンのイメージが覆るほどクリアです。
解像度はクリアな音作りも相まってかなり高めで、かなり細かい音も捉えきってくれます。解像度としてはモニターヘッドホンとしても使えるレベルですが、音質は原音忠実というよりは音質が中~高音に寄っているため、モニター用途にはもう少しフラットなヘッドホンがおすすめです。
一方で高音寄りの特性とクリアさの反作用で、シンバルの高音などが耳に刺さるため、曲によっては聞き疲れを感じます。
低域は中~高音に振っている本機ではやや物足りなさはあります。ただ密閉型の恩恵で低音の厚みが出るため、そこそこ低音の響きは感じられます。
またオーテク的にも低音の伸びを改善する狙いで本製品にはD.A.D.S構造(Double Air Dampimg System)という、2重構造のハウジング(イメージはハウジング中にもうひとつハウジングを設ける)機構の採用により中~高音の響きと低音の量感を実現両立しているようです。とは言え一般的な他社ヘッドホンよりは低域は弱めです
音場感は密閉型ながら良好で、開放型のような広がる音場感はありませんが、耳の近くで鳴って居る感覚はなく、密閉型の強みである音響感をよく感じさせてくれます。
向いている音楽はやはりジャズ、クラシックで、とにかく繊細かつ洗練された上品な音と、解像度の高さから楽器の音の生生しさを感じさせてくれます。
クラシックは開放型が向くという意見がありますが、本機はホールで聞いているような音響感を感じられるため、かなりクラシックの視聴は良く、クラシック特化ヘッドホンを探している人に一押しです。
ポップスも聞けますが、妙に洗練された上品な感じで聞こえるため、ハマればかなり良い感じと思いますがグループの相性はあります。
なおロックやメタルはかなり不向きです笑 筆者は色々なヘッドホンを聴いてきていますがロックですら品の良い感じに料理されてしまう感じで、正直驚異すら感じました……
EDM等の打ち込み系も、解像度の高さから悪くはないものの迫力に欠ける印象です。高音が耳に刺さりがちなのも△です。
テンションを上げる音楽ではなく、ジャズ、クラシックか、耳ざわりの良いラウンジ系の音楽をBGM的にゆったり聞くのが良いと思います
audio technica ATH-A1000X 装着感について
装着感は軽量アルミニウムハウジングの恩恵でサイズ感の割にかなり軽量で、軽い付け心地を実現しています。またオーテク得意のウイングサポート(下写真)が相変わらず素晴らしいです。
緩めの側圧で耳に圧迫感を感じさせることなく、頭を包み込んでくれるため装着感は良好です。側圧が緩いので眼鏡との相性も良好です。
一点欠点はイヤーパッドが浅めで耳がやや本体に接触します。短時間なら問題ないのですが長時間は気になる感じがあるのがマイナス点です。
audio technica ATH-A1000X 良い点、悪い点
●良い点
- 中~高音の響きに優れ、とにかく繊細かつ上品な音。ジャズ、クラシックは最高
- ホールにいるような音響感と籠り感を感じさせないクリアな音質を両立
- 軽量+ウイングサポートで装着感良好
●悪い点
- 線の細い音でロックやメタルにはとことん不向き
- 高音が多少刺さる
総評としては、中~高音域に振った尖った特性を持つ面白いヘッドホンです。特にジャズ、クラシックは息をのむほど素晴らしいです。
ロック等には不向きですが、オーテク得意の上品サウンドの神髄に触れられる製品なのでヘッドホンを使い分ける方には一度試す価値がある製品です。
(関連記事)
下記記事でこのヘッドホンを含む、各社のハイエンドヘッドホンの違いについてを徹底比較しています。興味ありましたらこちらもどうぞ!
【なにが違う?】二~三万円以上のハイエンドヘッドホン6選徹底比較【レビュー】